拝啓、
人もまばらなバスの中で一通のLINEが届いた。
20代前半、とにかく一緒に過ごす時間が多かった友人からだ。
先日結婚をした彼女からのメッセージは
「来年母になる」
という知らせだった。
10年程前の私は成人しているのにまだ大人と呼ばれることに違和感を感じて、そんなわけないのにこのまま20代が永遠に続くような気がしていた。
子供からすると十分に将来にあたる年齢なのにそれでも先が見えず歳を重ねることはどこか他人事で、不安が大きいから楽しい事で埋めて誤魔化す日々。
周りからの結婚報告やSNSで見かける日常を見てはどんどん置いていかれている気がして、大人になった自分の体にタイムスリップしてきた昔の自分が心だけ入れ替わったような気持ちで過ごしてきた。
そんな漠然とした不安さえも共感できるほどに、弱さも見せ合いバカなこともたくさんしてとにかく彼女といるときは笑いが絶えなかった。
そんな彼女が結婚をしただけでも感慨深かったのに、この世で一番大事な人との間に命を授かったのだ。
将来が不安で家庭を持つ人の話が別世界に感じたようなあの頃の友人の面影はもうない。
自分の手で幸せをしっかりと掴んだ。
その事実がとにかく嬉しかった私は、
「おめでとう」の一言を返信するよりも先に涙が溢れた。
こんな日がくるんだから大丈夫、
とあの頃の私たちに声をかけてあげたいようなサプライズとして残しておきたいような。
クリープハイプ の新しいアルバムタイトルに対して何がだよ、なんて悪態ついていた私もその時初めて納得できた。
「泣きたくなるほど嬉しい日々に」
再生ボタンを押し、
嬉しい報告を改めて噛み締めた。