フラッシュバック
高校三年生の三学期。
クラスでの卒業文集を作るのにあたり様々な項目においてのクラスメイトのランキングを掲載することになった。
アンケートは匿名で行われたリアルなもの。
当たり障りのない項目が並ぶ中
「いい匂いのする人」のランキングがあり、
そこで私は人生で初めての1番を取った。
その出来事のせいではないが、あれから10年経った今も同じ香りの香水を纏っている。
10月になり街を歩くと金木犀の香りが漂っていた。
人間の鼻には匂いに慣れるという、好ましくない匂いの時には嬉しい機能が授かっているがこの時ばかりは邪魔だな、と思ってしまう。
私は金木犀の香りが好きだし、この香りがすると思い出す事がある。
その時その時で流行る香水があった。
私が覚えているものでは
女子でいうと
クロエ
男子は
ウルトラマリン、スカルプチャー、ck1
あまりにみんながつけていたので、街中でこれらの香りがするとその当時に突然引き戻された気持ちになる。
休み時間の廊下で
放課後の教室で
そこら中にあった匂いだ。
誰がつけていたかは思い出せないしもちろんそれをつけていた誰かはそこにいない。
どこに咲いているのか見つけられないのに確かに香りはして、その存在を示している金木犀のようだと思うのだ。
私にとっては特に懐かしくないいつもつけている香水も、誰かにとってあの時の匂いになっているのだろうか。
そんなことを考えながら少し冷たくなった空気の中で思いっきり深呼吸をした。